薬剤師コラム

【マスクは意味ない?】予防効果が本当に期待できないエビデンスはある?

 

マスクは意味ない?
マスクは予防に効果ない?

 

以上のようにマスクは意味ない等といった情報を見かけることはないでしょうか?

 

本記事では、マスクは本当に意味がないのかをいくつかの論文をもとに解説していきます。

 

マスクは本当に意味ないのか?

実際に今まで行われてきた研究で、マスク着用のみの対策では予防効果は認められないといった報告がみられます。

まず風邪もしくはインフルエンザに対するマスクの有効性について記載している論文を三つご紹介します。

 

マスクには予防効果がない?❶

一つ目の論文です。

 

日本の医療機関のスタッフを対象に、マスク着用の有無により風邪症状に対する感染予防効果があるのかといったことを調べた論文です。

 

マスクを着用しているグループ着用していないグループに分け、のどの痛み、鼻水、咳などの風邪症状を77日間かけて記録する調査が行われました。

 

結果、マスク着用の有無によって風邪症状の発症日数や風邪症状の重症度に差はなかったと報告されています。

参考文献
Use of surgical face masks to reduce the incidence of the common cold among health care workers in Japan: A randomized controlled trial Jacobs J.L., Ohde S., Takahashi O., Tokuda Y., Omata F., Fukui T.
(2009) American Journal of Infection Control, 37 (5) , pp. 417-419.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19216002

 

 

マスクには予防効果がない?❷

二つ目の論文です。

 

インフルエンザ発症者がマスクを着用することで家庭内感染を防ぐことが可能であるか検討した調査です。

 

インフルエンザ陽性患者のいる家族を対象として、マスク着用しているグループと着用していないグループに分け、5日間調査を実施しました。

 

結果、調査期間中に家族がインフルエンザ様症状を示した割合は、マスク着用しているグループは16.2%着用していないグループは15.8%で、マスク着用による感染予防効果に有意差は認められませんでした

参考文献
A Canini L, Andréoletti L, Ferrari P, et al. Surgical mask to prevent influenza transmission in households: a cluster randomized trial. PLoS One. 2010;5(11):e13998. Published 2010 Nov 17. doi:10.1371/journal.pone.0013998
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2984432/

 

 

マスクには予防効果がない?❸

三つ目の論文です。

 

医療機関を対象に、サージカルマスクの着用状況とアウトブレイクについてアンケートによる調査を行ったうえで、サージカルマスクによるインフルエンザ予防効果を検討した論文です。

※アウトブレイクとは:一定期間内に、ある限られた範囲内あるいは集団の中で、感染者が予想よりも多く発生することです。「集団発生」ともいわれます。

 

結果、サージカルマスク着用を義務付けただけでは有効な予防効果はなかったと報告されています。

 

ただ、効果を評価する上では、マスクの着用遵守状況や手指衛生、ワクチン接種、予防投与など様々な要因も把握する必要があるため、今回の研究だけではサージカルマスクのインフルエンザ予防効果を否定するエビデンスを証明するまでに至らなかったと述べられてます。

参考文献
岡﨑悦子,森山由紀,小林寬伊.サージカルマスクのインフルエンザ予防効果. 医療関連感染. 2017年,10巻,1号,p.9-17. https://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20171024085000.pdf ,(参照2020-02-14).

 

 

マスクの有効性を追求するためにも、さらなる研究が必要といった現状です。

 

マスク着用のみの対策で有効性が肯定できるような論文が発見でき次第、随時更新していきます。

 

【 2020年2月18日追記① 】マスクは予防効果がない?④

新しい論文を見つけたので追記です。

 

2020年2月28日から3月27日まで、124家族の335人を対象としたコホート研究です。

 

家族内で1人感染者が出た場合に、他の家族に感染が起こった事例は23%でした。

 

家族内の新型コロナを発症した人が症状が出る前からマスクを着けていた場合は、家族への感染を79%減らしました

※発症後にマスクを着けても家族への感染は減らさなかったそうです。

 

この研究から言えることは、発症前からマスクを着用することの必要性が考えられます。

 

参考文献
ang Y, Tian H, Zhang L, et alReduction of secondary transmission of SARS-CoV-2 in households by face mask use, disinfection and social distancing: a cohort study in Beijing, ChinaBMJ Global Health 2020;5:e002794.https://gh.bmj.com/content/5/5/e002794,(参照:2020-02-18)

 

【 2020年2月18日追記② 】マスクは予防効果がない?⑤

東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループより発表された報告です。

 

この発表から、マスクにはコロナウイルスの対面する人への暴露量を減らす効果と、吸い込みを抑える効果があるということが述べられています。

 

そう解釈できる一文を下記に引用します。

ウイルスを吸い込む側のマネキンに各種のマスクを装着させて、ウイルスの吸い込み量を調べました。その結果、布マスクを着用することでウイルスの吸い込み量がマスクなしと比べて60-80%に抑えられ、N95マスクを密着して使用することで10-20%まで抑えられることがわかりました(図3)。

引用:新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果

※図3は引用のリンクからご確認下さい。

 

上記引用文に記載はありませんが、普通のマスク(いわゆるサージカルマスク)は50%ほど抑えられています。

 

一方で、N95マスクは密着して使用しないと防御効果が低減することもわかりました。

 

つまり、マスク着用によって吸い込みを抑える効果はあっても、"マスクのみではウイルスの吸い込みを完全には防ぐことができない"ことも明らかになりました。

 

これらのことから、マスクを適切に装着することが感染拡大防止につながることが考えられます。

 

マスクの正しい着用方法について以下の記事で解説していますので、よろしければご覧ください。

【マスクの正しい付け方と外し方】マスクの種類と着用方法を解説

続きを見る

 

 

マスクは意味ないとは言い切れない

様々な意見や報告がありまが、マスクは意味がないとは言い切れません。

上記でも少なからず暴露量を減らしたりと結果が出ていますし、他にもこんな物理的な問題もありました。

 

人は無意識に顔を1時間に〇〇回触ってる

人は無意識に顔を触ることがあり、顔(目・鼻・口など)を触ることで感染するリスクは当然高まります

 

実際にどれくらい無意識に顔を触っているかを調べた研究があります。

 

結果、1時間に平均23回、無意識に顔を触っているといった報告されれいます。

感染経路となる顔の粘膜部位(口や鼻、目など)接触では、口が最も多く、次いで鼻、目といった順番でした。

 

このことから、マスクをすることで口、鼻への直接的な接触を避けられるため、マスクをする意味が少なからずあるのではないかと考えられます。

 

 

 

マスクだけではなく手洗いも大事

上記で人は無意識に顔を触る習慣があると述べました。

 

無意識に顔を直接的に触らないためにもマスクするのには意味があるといった考察をしましたが、目は覆えないのでマスクしてようがしてまいが関係ありません。

 

汚れた手で目をこすってしまうことで感染が起こることもあります。

 

そこで、次はなにが大事になってくるかというと、手指衛生です。

 

流水と石けんを用いた手洗いアルコール消毒を用いた手指消毒が大切です。

 

手洗い・うがいなど基本的なことでも、正しくできるかがポイントです。

 

正しい手洗い方法は消毒剤や洗浄剤、医薬品、食品を製造する化学・日用品メーカーであるサラヤ株式会社の「せいけつ手洗い」をご参照ください。

 

 

マスクは意味ない?まとめ

マスク着用のみの対策が有効という報告は、今のところ見つかりませんでした。

 

かといって、意味がないとも言い切れるための条件が揃っているわけでもなさそうなので、着用した方が良いと考えて頂いて良いかと思います。

 

万が一、今回のコロナウイルスのような飛沫感染が考えられる病気にかかっていた場合に、周囲の人になるべくうつさないためにも、マスクをすることは大事です。

 

咳等の症状のある人が、マスクを着用をすることで、咳やくしゃみをした時の飛沫(しぶき)を防ぎ、感染拡大を抑えることがマスク着用の最大の目的です。

 

加えて、基本的な手洗い消毒うがいも大事です。

 

自分でできる最低限の予防はこなし、健康な生活を送りましょう。

 

 

以上がマスクは意味がない?についての記事でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

他になにか気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください。

 

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