OTC(市販薬) 薬剤師コラム

【インペアード・パフォーマンス】花粉症の薬で気をつけたいこと

 

花粉症の薬を飲むとボーっとする
花粉症の薬を飲むと思った通りの動きができない

 

花粉症の薬を飲んだ時、こんな経験をしたことはないでしょうか?

 

花粉症のお薬を飲んだら眠くなることがあるというのはよく知られています。

 

ですが、自覚がないなか無意識に判断能力が低下していることもあるのはご存知でしょうか?

 

このような状態をインペアード・パフォーマンスと言います。

 

本記事では、そんなインペアード・パフォーマンスとは何なのかを詳しく解説します。

 

また、併せてインペアード・パフォーマンスの起こりにくい花粉症市販薬もご紹介します。

 

インペアード・パフォーマンスとは

インペアード・パフォーマンスとは抗ヒスタミン薬を服用することにより起こる、集中力・判断能力・作業効率の低下を言います。

 

また、脳の働きを鈍らせることから鈍脳ともいわれます。

 

花粉症やアレルギーのお薬として、抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなる可能性があるというのは一般的に知られつつあります。

 

ただ、「自分は眠くならないから平気」ということではなく、自分でも気づかないうちに脳の働きが鈍くなっていることがあります。

 

眠気などの自覚症状とは違って起こるのがインペアード・パフォーマンス(鈍脳)です。

 

インペアード・パフォーマンスとは実際にどのくらい影響を与えるのかを、この記事の最後に事例を紹介します。

※人によっては割と衝撃的な事例かもしれないので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

 

インペアード・パフォーマンスの起こる理由

ヒスタミンは脳内で、睡眠や覚醒リズムの調節、食欲の調節、注意力・集中力の維持などの様々な働きをします。

 

花粉症のお薬に含まれる抗ヒスタミン成分は、脳内のヒスタミンの働きをブロックしてしまうため、脳内の働きを低下させていまいます。

 

抗ヒスタミン薬により脳内の働きが低下することが、インペアード・パフォーマンスを引き起こす原因となります。

 

※花粉症のアレルギー反応に関するヒスタミンについては、以下の記事を参照ください。

関連記事花粉症に効く抗ヒスタミン成分とは?

 

 

インペアード・パフォーマンスを防ぐ

インペアード・パフォーマンスを防ぐにはどうしたらいいか?

 

完全に防ぐのは難しいですが、インペアード・パフォーマンスが起こりにくい市販薬を選ぶことはできます。

 

インペアード・パフォーマンスの起こりやすさ

インペアード・パフォーマンスの起こりやすさについて解説します。

(※この記事では市販薬に含まれる成分に焦点を当てているため、医療用のみにしかない成分は省略します。)

 

抗ヒスタミン成分は、「非鎮静性」「軽度鎮静性」「鎮静性」に分けられます。

 

この三つの違いを簡単に言うと、脳内のヒスタミンをどれだけブロックするか(インペアード・パフォーマンスを起こりにくくするか)ということです。

 

非鎮静性」が最も脳内のヒスタミンをブロックする割合が低く、次いで「軽度鎮静性」「鎮静性」の順で高くなっていきます。

 

非鎮静性」が最も脳内のヒスタミンをブロックする割合が低いということは、インペアード・パフォーマンスが起こりにくいということです。

 

以下に「非鎮静性」「軽度鎮静性」「鎮静性」の三つに分類分けした表を示します。

  成分
非鎮静性 ・フェキソフェナジン
・エピナスチン
・エバスチン
・ロラタジン
・セチリジン
軽度鎮静性 ・アゼラスチン
・メキタジン
・セチリジン
鎮静性 ・d-クロルフェニラミン
・ジフェンヒドラミン
・ケトチフェン

参照:鹿児島県医師会 抗ヒスタミン薬の鎮静作用

 

インペアード・パフォーマンスの起こりにくい成分

非鎮静性の中でもより脳内ヒスタミンをブロックする割合が最も低い成分(=インペアード・パフォーマンスが起こりにくい)を、順に並べたのが以下の通りです1)

<ブロックする割合が低い

フェキソフェナジン
エピナスチン
エバスチン
ロラタジン


<ブロックする割合が高い

参考文献
1)谷内一彦. 小児における抗ヒスタミン薬の選択について考える. 小児耳鼻咽喉科. 2018年,39巻,3号,p.275-282. doi:10.11374/shonijibi.39.275. https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/39/3/39_275/_pdf/-char/ja ,(参照2020-02-05).

 

つまり、インペアード・パフォーマンスを抑えたいという方は、非鎮静性のなかだとフェキソフェナジンがオススメとなります。

 

ですが、非鎮静性の成分であればどれもかなり小さい差での違いなので、そこまで気にするほどではないです。

 

以上のことから、非鎮静性の成分を選ぶことが、インペアード・パフォーマンスを防ぐ方法となります。

 

では次に、非鎮静性の成分を含んだ市販薬を紹介していきます。

 

インペアード・パフォーマンスが起こりにくい市販薬

非鎮静性(インペアード・パフォーマンスが起こりにくい)の花粉症の市販薬をご紹介します。

 

フェキソフェナジン

 

嵐の大野智さんが出演しているCMで有名なお薬、アレグラです。

 

成分はフェキソフェナジンです。

 

非鎮静性の中でも、より脳内ヒスタミンをブロックする割合が低い(インペアード・パフォーマンスが起こりにくい)成分です。

 

1回1錠、1日2回(朝夕)服用のお薬です。

 

エピナスチン

 

木村文乃さんが出演しているCMで有名なお薬、アレジオンです。

 

成分はエピナスチンです。

 

1回1錠、1日1回(就寝前)服用のお薬です。

 

エバスチン

 

エバステルALというお薬です。

 

成分はエバスチンです。

 

1回1錠、1日1回(就寝前)服用のお薬です。

 

ロラタジン

 

嵐の櫻井翔さんが出演しているCMで有名なお薬、クラリチンEXです。

 

成分はロラタジンです。

 

1回1錠、1日1回(食後)に服用するお薬です。

 

 

インペアード・パフォーマンスが与える影響の事例

エスエス製薬のサイトで、インペアード・パフォーマンスが車の運転や勉強に与える影響が記載されていたので、共有(引用)させていただきます。

 

抗ヒスタミン薬の中には、これを一回量服用すると、ウィスキーシングル3杯分(約90mL)を飲んだ時とほぼ同程度の鈍脳状態になるものもあります。
多くの抗ヒスタミン薬は、使用上の注意において、乗物又は機械類の運転操作をしないこととされておりますので、服用後は運転操作等を行わないでください。

出典:Tagawa M, Yanai K et al:Br J Clin Pharmacol 53:296, 2002、Tagawa M, Yanai K et al:Jpn J Pharmacol 83:253, 2000

引用:エスエス製薬 You don't know? “鈍脳”

 

ある調査によると、試験中にアレルギー性鼻炎の症状のあった学生1001人を対象に、アレルギー性鼻炎の症状と鎮静性抗ヒスタミン薬による成績への影響を調査した結果、アレルギー性鼻炎の症状による成績低下が全体では40%だったのに対して、試験中に鎮静性抗ヒスタミン薬を服用した群(84人)では、成績低下が70%にも達したと報告されています※。

出典:Walker S et al : J Allergy Clin Immunol 120 (2) : 381, 2007より

引用:エスエス製薬 You don't know? “鈍脳”

 

 

インペアード・パフォーマンス、軽視できないですね、、、。

 

受験シーズンなどは特に適切な薬選びが大切になってくるかと思います。

 

店頭で薬選びに困ったり、不安なことがありましたら薬剤師もしくは登録販売者にお尋ねください。

 

 

以上がインペアード・パフォーマンスについての記事でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

他になにか気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください。

 

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